辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本65】『宮本亜門のバタアシ人生』居場所を見つけた11人の生き方コツ話

自殺未遂・引きこもり・対人恐怖症・・・・・・すべて経験済み 宮本亜門のバタアシ人生 生き方を見つけた11人の生き方コツ話

宮本亜門

世界文化社 2008年発行

 

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昔、同僚が『アイ・ガット・マーマン』を観に行くと言ってとても楽しそうにしていた。

 

以前、宮本亜門氏がイギリスでの演出に挑戦したときのインタビューを読んだ時、それまでももちろん存じ上げていたが、何か印象に残るものがあった。

 

その後、何かで目にするたびに、

彼の話すことが胸に響くことが何回かあり、彼の感覚や感性がとても好きだなぁと。

 

今、私にとってはこれまでの人生の中でもちょっと辛い時期。

無性に宮本亜門氏の本が読みたくなった。

 

この本をおすすめしたい人

  • 挫折感を感じている人
  • 病気を患っている人
  • 死や生を考えてみたい人
  • 悩んでいる最中の人

 

作者紹介

1958年1月4日生まれ。東京都出身。

出演者、振付師を経て、2年間ロンドン、ニューヨークに留学。

帰国後の1987年にオリジナルミュージカル「アイ・ガット・マーマン」で演出家としてデビュー。

翌’88年には、同作品で「昭和63年度文化庁芸術際賞」を受賞。

ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、オペラ等、現在最も注目される演出家として、国内外に活動の場を広げている。

2004年に、ニューヨークのオンブロードウェイにて「太平洋序曲」を東洋人初の演出家として手がけ、2005年同作はトニー賞の4部門でノミネートされる。

 

宮本亜門のバタアシ人生』より引用

 

 この本のおすすめポイント

  • 11人の対談相手から人生のヒントを得られる
  • 宮本亜門氏の人生体験から生きる勇気が生まれる
  • ”見えないこと”について語られている内容を様々な視点から語られている
  • 科学者も対談相手にいるので、科学者目線での”目に見えない事”が語らている点が興味深い
  • 壮絶な体験が語られているので、自分の生に感謝を感じることができる

 

 

心に残った点・役に立った点

 

宮本亜門氏のこれまでの人生がすごい

 

この本は、11人の対談者が登場する。

 

第一章 自分の居場所が見つけられない人へ

第二章 自分の殻に閉じこもり、抜け出せない人へ

第三章 やってもやってもうまくいかないと思っている人へ

第四章 何かを変えたいのに、変えられない人へ

第五章 生きている意味がわからなくなった人へ

 

それぞれの章にタイトルがつけられ、

それに沿った内容になっている。

 

対談の前に、

”亜門STORY”として、宮本亜門氏のこれまでの人生が語られている。

 

それがすごい。

 

表紙に、

自殺未遂・引きこもり・対人恐怖症・・・・・・すべて経験済み

とあるが、その表現に偽りなし。

 

自殺未遂も、引きこもり、その他にも沢山の挫折も体験されてきた宮本亜門氏。

 

だが、俯瞰してみると

その全てが演出家になるために必要だったのだと思えるほど。

 

今の宮本亜門氏になるためのストーリーになっている。

 

以前、”全ては最善”という言葉を聞いたことがあるが、

その時は「それは偽善ではないのか。つらい経験が結果としてそう思えることもあるが、選択を間違っただけのことも多いのではないか。」と思った。

 

だが、この”亜門STORY”を読むと、

”全ては最善であり必要だった”となんだか思えてくるのだ。

 

その時その時は、とても辛かったはずだ(読んでいてもこちらの胸が痛くなる部分も多い)。

だが、そのひとつひとつが、地となり肉となって演出家宮本亜門を作っているパーツになっているように思えた。

 

この部分に気付き、

自分の人生も少しは肯定してもいいのかなと思うことができた。

 

今、辛いことも多い。

だが、後でみてこれも私の人生の必要な経験であったと思える日が来るような気がして勇気が出た。

 

若いときの失敗や苦い思い出を公開している人は、

読んでみると良いかも。

 

 

 

 

 
 
生まれたこと・生きていること
この本で印象的だったのは、
遺伝子学研究者の村上和雄さんと、ヨットマンの佐野三治さん、医師の船戸崇史さん。
 
村上和雄さんのご著書は何年か前に何冊か読んだことがあるが、
今回改めて、”32億分の1の奇跡”について思うところがあった。
 
世界中の学者が集まっても、60兆の細胞は作れない。
人間は奇跡。奇跡があまりに大きいから感じない。
 
そして、人間の命は尊い、素晴らしい。
それを実感するのが遺伝子のオンオフに大事とのこと。
(DNAのうち働いているのは2,3%であとは何をしているのかわからないそうなのだ。何かの拍子に眠っている遺伝子のスイッチがオンになって働き出すことがあるそう)
 
体は元素からできていて、
地球の元素は宇宙から来ているから、私達は宇宙のひとかけら。
 
このコトを読んだ時、
自分の意識がふわっとなるような気がした。
137億年の結晶の私達の命。
 
なんだか、じーんとくる。
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

10人目の佐野さん。
初めての本格的な外洋ヨットレースで遭難事故にあわれた。
27日間漂流したあと、たった一人だけ助かった。
その過程で周りの人達が、ひとりまたひとりと亡くなっていく。
 
すさまじい経験。
 
読みながら生きるという事、死ぬと言う事を
考えずにはいられない。
 
11人めの医師 船戸さんの話は死や死に様というものを考えることによって、
どう生きるかだけでなく、どう逝かせてあげるかを初めて考えることができた。
 
この方は、
対談後にガンの告知をうけ、手術したことを記した
”私の手術体験”も載っていた。
この部分も是非読んで欲しい。
 
他にも、アーティストの横尾忠則さんや、
作家で科学者の天外伺朗さん、作家の荒俣宏さんも印象深かった。
 
自分の居場所が無いと思っている方、
今もがいている方、おすすめです。
 
 
 

【おすすめ本64】『パリのおうち時間』 中村江里子 ※パリのロックダウンの中で セゾン・ド・エリコ

『パリのおうち時間 変わらないこと、変わったこと。私が大切にしていること。

中村江里子 扶桑社 2021年5月 発行

 

 

 

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ご主人は結婚当時から、月の半分はパリを離れている生活。

 

だがこのコロナ禍の中、出張はなくなりパリのロックダウンの中、

家の中で朝から晩まで一緒に過ごすことになったそうだ。

 

そうした中で、

2014年から7年間発行してこられた『セゾン・ド・エリコ』をムックにしたのが『パリのおうち時間』。

 

 

この本をおすすめしたい人

  • 中村江里子さんの着こなしが好きな人
  • 『セゾン・ド・エリコ』を全部追っていくのは大変なのでエッセンスをざっと読みたい人
  • 日本人の目で書かれたパリの生活を知りたい人
  • おしゃれな生活全般のヒントを得たい人 

 

作者紹介

中村江里子 Eriko Barthes(エリコ・バルト)

 

1969年東京生まれ。

立教大学経済学部卒業後、フジテレビのアナウンサーを経て、フリー・アナウンサーとなる。

2001年にシャルル・エドワード・バルト氏(化粧品会社経営)と結婚し、生活の拠点をパリに移す。現在は17歳、14歳、10歳の3人の子どもの母親でもある。

パリと東京を往復しながら、テレビや雑誌、執筆などで活躍中。著者多数。2014年より刊行しているパーソナルマガジン『セゾン・ド・エリコ(中村江里子のデイリー・スタイル)』(扶桑社)も好評を博している。

 

『パリのおうち時間』より引用

 

 

 

この本のおすすめポイント

  • 割烹着や前掛けなど意外なものも紹介されていて目からうろこ
  • おしゃれ、暮らし、台所など内容が生活全般
  • 中村江里子さんのセンスに触れられる
  • 年齢や老いを否定せずおしゃれを楽しもうという気になれる

 

心に残った点・役に立った点

 

やっぱりおしゃれのページが楽しい

 

個人的には、やはりおしゃれに関してのページが楽しかった。

 

中村江里子さんといえば、

シャツにタイトスカートやラインがきれいでシックワンピースなど、シンプルでクリーンなイメージ。

 

でもこの本には彼女らしさを失わず、でも自由におしゃれを楽しんでいるのわかる。

 

日本の同年代の女性がちょっとひるみそうなショートパンツなどのおしゃれも楽しんでいてそれがとてもお似合い。

 

厚底のピエールアルディの靴も載っているが、

こういう靴もコーディネートでそれなりの年齢の女性も楽しめるということがわかりちょっと目からうろこ。

 

「欲しい!」と思ったのは、

PERRIN PARIS(ペラン)のクラッチバッグ

 

クラッチバッグにグローブがついているものや、ブレスレット状のものがついているものなど”バッグは腕の延長にあるもの”というブランドコンセプト通りのバッグ。

 

パーティーが日常にあるフランスならではのコンセプトでとても素敵。

 

 

割烹着と前掛け

パリに住む中村江里子さんのイメージとはちょっと違って面白かったのは、

前掛けと割烹着。

 

家事をする時は、Tシャツにジーンズや短パンという汚れてもいい服装でしていたそうだが、割烹着を知人におすすめされて使ってみてから愛用するようになったそう。

 

これ、とてもわかる。

私も漂白剤を使ったりする時は、Tシャツに着替えたりしてたので。

 

エプロンとは違い、割烹着は袖もすっぽりカバーできるので、

洗い物の時やセーターなどを着ている冬にもとても便利そう。

 

中村江里子さんは、

短い丈とふくらはぎまでの長いものを両方使っているそう。

 

この本で紹介されていたものは中川政七商店のもの。

 

 

 

 

 

そして、中村家でコレクションしているのが藍木綿の前掛け。

 

なんと、10年前に旦那様と函館を訪れた時に、

旦那様のフランス人の情報で函館少年刑務所売店でしか変えないという前掛けを買うためにタクシーを走らせたのだそう。

それ以後、蚤の市で見つけたりプレゼントで貰ったりしてコレクションのようになっているそう。

 

フランス人には漢字アートのように見えるらしいので、

 外国人の方のプレゼントにも面白いかも知れない。

 

 

 

 

 カラフルなキッチン

 

この本には、バルト家のキッチンも載っているが、

テーマカラーはトリコロールだそうで意外にもとてもカラフル。

キッチンがとても広いのがリッチ。

 

キッチン小物もシンプルながらも美しいデザインのものを選んでいて

その審美眼が素敵。

 

アレッシィの塩コショウ入れもとても美しい。

 

アレッシィと言えば有名なのが

ワインオープナーエスプレッソコーヒーメーカー、レモンスクイーザー。

この3つは雑誌などでも目にしたことがある方も多いかも。

 

 

 

 

  
 
 
うちは卓上で塩コショウは使わないので、
エスプレッソコーヒーメーカーが欲しい。
 
私も、デザインが美しいキッチン用品にアップデートして
ちょっと出しっぱなしでも絵になりそうなものを選んでいきたいなぁと思う。
 
 
ガトーショコラやバナナケーキのとても手軽に作れそうなレシピも載っているので、おうち時間を楽しみたい人は是非どうぞ。
 
 
 
 
 
※おしゃれ面で言えば、
2013年発行とちょっと古いけど
『Erikoクロゼット AtoZ』がおすすめ。
 
レザーグローブや帽子などのおしゃれや
服をオーダーする楽しさ、
大ぶりアクセや好きなものを着る喜びなど
フランスのエッセンスも感じられる。
(個人的には、靴が大好きなので靴のページやロエベのページが楽しかった)
 
スカート丈などで2013年の内容というのがわかるけど、
中村江里子さんはいいものを長く愛用されるので、ずっと愛用できるおしゃれアイテムも沢山。
 
 
 
 
 

【おすすめ本63】『大家さんと僕 これから』矢部太郎 ※大家さんと僕の続編

『大家さんと僕 これから』

矢部太郎

新潮社 2019年発行

 

 

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↑ ”大家さん”は新宿伊勢丹のヘビーユーザーで、

戦後GHQ新宿伊勢丹を接収した話も載っています

 

 

去年(2020年)の11月に初めて読み(その時すでに知名度バツグンの本だったので今更感はあったが)おすすめしたくなり、ご紹介した『大家さんと僕』。

 

 

nonko-h.hatenablog.com

 

 

この『大家さんと僕 これから』はその続編。

 

 

この本をおすすめしたい人

  • 『大家さんと僕』を読んだことのある人
  • 生と死、生きるということを考えたい人
  • ホッとしたりしんみりしたい気分の人

 

作者紹介

矢部太郎(やべ・たろう)

 

1977年生まれ。

お笑い芸人。

1997年に「カラテカ」を結成。

芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、

映画で俳優としても活躍している。

初めて描いた漫画『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。

 

『大家さんと僕 これから』より引用

 

 

この本のおすすめポイント

  • 読んだあとに余韻が残る
  • 生と死を自分なりに考えられる
  • 戦争時代の事を大家さんの体験から知ることができる
  • 疲れている時に読むとホッとする

 

 

心に残った点・役に立った点

 

永遠に続くものは無いのだけど

 

『大家さんと僕』の宣伝文句の中に、

”この時間が、永遠にのように思えてくる”

というコピーがあった。

 

これは糸井重里氏のコピー。

 

このコピーは前作の『大家さんと僕』のためのものだが、

今作を表すのにとてもぴったりなのだ。

 

うーん、さすが糸井重里氏。

 

生と死はセットだし、

裏と表のようなもの。

 

この本を読むと、ホッとするし温かい気持ちにもなるけど、

ちょっぴり悲しく、しんみりもする。

 

やっぱり人間って、

温かい気持ちを感じるには悲しみも必要だし、

両方あっていいんだなぁーなんてちょっと違うことも感じた。

 

 

シャガールみたい

本書の中のいくつかのシーンでは、

シャガールをイメージさせる絵があった。

 

ふわっとした浮遊感みたいなものを感じた。

 

素朴に見える絵だけれど、

作者の矢部さんはとても表現がうまいのだと思う。

 

だから、余韻が残る。

 

その余韻の中で、色々思いを馳せる時間ができるというのがこの本。

 

 

今という瞬間と出会い

 

矢部さんは、

それまでも幸せだったけれども、

大家さんと出会ったことによってもっと幸せになったと表現している。

 

 

この本はフィクションであり、

実話をもとにして実際の大家さんからイメージして作り上げたキャラクターがこの本に出てくる大家さんなのだそうだ。

 

だからある意味ファンタジーでもあるんだけれど、

本から感じる2人の間に感じるものは、友情。

 

親と子やおばあちゃんと孫とはまったく違う、

適度な距離感がある友情。

(それをこの本の中の大家さんは「血のつながらない親族」と表現している)

 

 

私の祖母も祖父は全員亡くなっているが、

母方の祖父は、たまに戦争の話をした。

(でも自分の戦争体験の話はしなかった。亡くなった弟や他の人の話が多かった)

 

そういう時、

その場がなんとなく居心地が悪い空間になったりした。

 

「またはじまった」みたいな空気感というか。

 

今考えると、

もっと色々聞いておけばよかったなーと思う、ほんとに。

 

 

この本の中でも、

大家さんはよく戦時中や戦後の話をされる。

 

そういう話を聞きたがらないとか、

聞くのが面倒くさいと思う人も多いと思う。

 

矢部さんはちょっと戸惑いながらも、聴いている。

 

身内だとその辺がぞんざいになったりするが、

「血のつながらない親族」というこの2人ならではの距離感で

淡々と受け取り合っている感じが良いのだ。

 

 

コロナ禍の現在、

ともすれば恐怖に取り込まれそうになったり、

よくわからない焦りを感じたりするが、

そんな時、この本を読んでみるのも良いかも知れない。

 

 

 

 

 

 

【おすすめ本62】『ざんねんな三国志』 真山知幸 劉備・関羽・張飛・諸葛亮もざんねん(?)

『ざんねんな三国志

真山知幸 

株式会社一迅社 2020年発行

 

真山知幸さんの本は、

以前『企業としてみた戦国大名』が面白かったので、

三国志を読む前に、三国志に出てくる登場人物に興味が湧くかもとこの本をチョイス。

 

 

nonko-h.hatenablog.com

 

 

 

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この本をおすすめしたい人

  • 三国志に興味があるけど大作なので気後れしている人
  • 三国志の登場人物に興味がある人
  • 三国志はだいたい知っているけど人物についてもっと知りたい人
  • 三国志を違う角度でみてみたい人
  • 数時間でざっと三国志の登場人物について知りたい人

 

作者紹介

真山知幸

 

著述家、偉人研究家。

1979年同志社大学法学部卒業後、専門出版社の編集長を経て執筆業に専念。

名古屋外語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などで、偉人や名言をテーマに講師活動も行っている。

主な著書に『ざんねんな偉人伝:それでも愛すべき人々』『残念な歴史人物それでも名を残す人々』(学研プラス)、『企業として見た戦国大名』『ざんねんな名言集』(彩図社)などがある。

 

『ざんねんな三国志』より引用

 

この本のおすすめポイント

  • 文字も大きく本の厚さも無いので気軽にサッと読める
  • 魏呉蜀の国別にわかれているのでわかりやすい
  • 人物だけではなく戦記も載っているので全体像を把握しやすい
  • 登場人物についての”ざんねんな部分”が紹介してあるので、長所も短所も突き抜けていて面白く感じる
  • 登場人物の個性が豊かで読んでいて面白く三国志が読みたくなる
  • おきにいりや気になる武将がいるかも?

 

 

心に残った点・役に立った点

 

劉備

三国志についてそれほど詳しくはないが、

劉備関羽張飛曹操諸葛亮などは知っているあさーい知識。

 

その中でも劉備は日本人好みの武将だろうなーと勝手に思っている。

まぁ主人公的な人だしね。

 

あまり欠点が無いようなイメージだが、

こういう真面目で情に厚い人は、それがいきすぎるとびっくりするような行動になってしまうのがなるほどー、と頷ける。

 

ここでその内容を書くのは避けるが、

各項目の最後に一言ずつ吹き出しが入っているのだが、それをご紹介。

 

「ほとばしる人間愛がスゴすぎて、なんだかもうワケが分からない、、、、。」

「お互いに恐れ合っていた劉備曹操。これぞライバル。」

「正しいけれど、なんかモヤモヤする、、、、それこそが劉備。」

「はい、処刑!優しい人を怒らせると怖いんです。」

 

特に、

「正しいけれど、なんかモヤモヤする、、、、それこそが劉備。」

はうまいこというなぁー。

 

「モヤモヤする」とは的確な表現。

 

関羽

以前台湾に行った時に、

台湾での関羽人気にびっくりした。

(だって台湾は三国志とは関係ないところなので)

 

行天宮というお寺に行ったが、そこは関羽が祀られていた。

(どんなジャンルにも満遍なくご利益があるとその時聞いてびっくり。関羽を祀っているお寺は台湾各地にあるそう。)

 

まぁ、でも行天宮は交通が便利で観光客も多いが、

地元の方たちに親しまれているお寺という感じでとても良かった。

(杯を投げたりして運を占う事もできるのも面白かった)

 

台湾で祀られている関羽像は立派な髭が印象的。

 

曹操から送られたプレゼントはある物を除いて全部返却したそうだ。

 

その”ある物”とは、「髭を包む袋」

 

関羽は「冬に髭が切れないように、黒の紗の袋で包む」

曹操に言ったのを聞き逃さなかったようだ。

 

曹操はさっそく、

錦紗で髭を包む袋を作って関羽にプレゼントしたらしい。

それをいたく気に入った関羽は早速髭をその袋で包んだらしい。

 

関羽は髭の美しさから「美髯公(びぜんこう)」と呼ばれたそうなので、

髭にはこだわりがあったのだろう。

 

でも、髭を包む袋って!

顎の下にそんなのつけるのは邪魔じゃないのかしらん。

 

この本に書かれているような逸話を知っていたら、

行天宮に行った時も違う重みがあったかもしれない。

 

関羽はすごく強い人のイメージしかなかったので、

こういうよくわからないが人間くさい部分もチャーミングに思える。

 

コロナが収束して、

また台湾に行けるようになった時、

この本を読んで関羽について立派な部分以外の人物像を知るのも面白いかも。

 

 

 

三国志を色々読んでいてものすごく詳しい知人に、

三国志の中で誰が好きか聞いた時の答え。

 

「昔は張飛。大人になってからは特別にはいない。」

 

その人が言うには、中国人が好きなのはずっと曹操なのだそうだ。

なんだか納得。

関羽も人気あるみたいだが)

 

この本を読んで、私が気になった人物は、趙雲周瑜

 

その人に

周瑜ってどんな人?」

と聞いたときの答え。

 

「頭いいけど短気で病弱」

 

(え、これだけ?)

 

周瑜はなんだか複雑なものを抱えている感じで、

もっと人物について知りたいと思わせられる人。

 

趙雲についてのざんねん逸話を読んでもあまりざんねんではなく、

むしろかなりいい男!という内容だった。

 

だが、周瑜は「なんで?」みたいな逸話が多く、

そこが面白い。

 

三国志、読むの大変そうだなぁーとずっと手が出なかったが、

読んでみようかな?と思わせられる本。

 

何より、突き抜けている人は、

短所(?)も突き抜けているという点が面白い。

 

長所が大きければ短所も大きい

(見ようによっては長所と短所は紙一重かも知れないけど)

 

そのへんのところも、

つくづく人間について考えさせられたのも良かった。

 

人によっては

「ふざけた内容!」と思う人もいるかも知れないけど、

軽く笑いながら読んでみたい人には是非。

 

 

 

 

 

 

【おすすめ本61】パリジェンヌのつくりかた カロリーヌ・ド・メグレ他

パリジェンヌのつくりかた

カロリーヌ・ド・メグレ、アンヌ・ペレスト、オドレイ、ディワン、ソフィ・マス

古屋ゆうこ訳

早川書房 2014年初版発行

 

 

主人が前にヨーロッパ亡国の会社で働いていた頃、

フランスなどで会議(と言う名のそれぞれの国の社員を集めたパーティーみたいなもの)があった。

 

そのときのことは、

10月なのにとても寒いし、

凱旋門のところなんてスリだらけだし、

道は犬の糞だらけだし、、、。

 

でも、ムール貝は日本で食べるよりも安くて何倍も美味しいし、

ビストロで黒板に書いてあるメニューを頼んだりして食べたものはとても美味しいし、店に来ていた年配のカップルと会話したりして楽しかった!そうだ。

 

(ヨーロッパの各会社から来ていた人たちの喫煙率はとても高く、喫煙ルームは色んな国の人たちとも会話しなければならなかったようだ。この本の彼女たちもベッドの中で、階段を登りながらシガレットをくわえていて何故かそれが絵になる)

 

パリにはパリにしかない雰囲気があり、

いつかそれを私に味わってもらうためにパリに連れていきたいというが、

パリねー、パリよりポルトガルに行ってみたいなーとあまり興味もなく。

 

でも雑誌のパリジェンヌの着こなしの写真を見るのは好き。

映画『死刑台のエレベーター』も大好き

ジャンヌ・モローはなんて素敵)

 

 

あー、やっぱり私もパリジェンヌは特別な存在だと思っているのかも。

 

 

『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット)や、

HBOの大ヒットドラマ セックス・アンド・ザ・シティ(大好き!)でも、アメリカ人は本当にパリに対する憧れが強いんだなぁと思わせられるが、この本を読むとその理由がなんとなくわかる、、、。

 

 

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この本をおすすめしたい人

  • 日本の従来の価値観に違和感を持つ人
  • パリジェンヌのおすすめの店や本が知りたい人
  • フランス人の価値観を知りたい人
  • パリに行ったことがある人、これから行ってみたい人
  • 憧れの部分だけではなく、リアルなパリジェンヌの考え方などが知りたい人

 

作者紹介

著者

カロリーヌ・ド・メグレ(Caroline de Maigret)

ソルボンヌ大学で文学を学んだのち、ニューヨークにわたりモデルとして活躍。

2006年にパリに戻り、音楽レーベルを設立。

2012年からシャネルのアンバサダーを務めるほか、貧困層の女性の自立を手助けするNGO「CARE」の活動を支援している。

2014年、ランコムのミューズに就任。

 

アンヌ・ベレスト(Anne Berest)

作家。2作の小説のほか、2014年にはフランソワーズ・サガンの伝記Sagan1954を発表。テレビや映画、舞台の脚本も手掛ける。

 

オドレイ・デュワン(Audrey Diwan)

ジャーナリズムと政治学を学んだのち、脚本家に。

ジャン・デュジャルダン主演、セドリック・ジメネス監督の映画LaFrench(2014年12月フランス公開)の脚本をてがけている。

初監督作品が近日公開予定。また、「スタイリスト」誌のエディター・アット・ラージを務める。

 

ソフィ・マス(Sophie Mas)

パリ政治学院とHEC経営大学院修了後、映画会社を設立。

現在は、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンパウロを拠点に映画プロデューサーとして活躍している。

 

訳者

古屋ゆう子(ふるや・ゆうこ)

幼少期からの13年間をドイツ、フランスですごす。

これまでに編集プロダクション、カルチャー分野のライター、「クーリエ・ジャポン」のフランス担当など、雑誌を中心に活動。フランスの好きな都市は、映画三昧の日々を送ったリヨン。

 

 

 

 この本のおすすめポイント

  • 辛口で皮肉屋で自分は自分というパリジェンヌの考え方を知ることによって、いい人、いい妻、いいお母さんという枠組みから外れてもいいんだと思える
  • 女性らしさを存分に楽しんでいる彼女たちから、自分の女性性を開放できる
  • 子供がいても自分の人生を諦めなくても良いと知ることができる
  • パリジェンヌにきれいなイメージしかもっていないなら、そのイメージを色んな意味で覆すことができるかも?
  • 日曜日のシンプルレシピやおすすめスポットなどが載っている

 

 

心に残った点・役に立った点

 

母親の流儀

最初から言い切ってしまうのもなんだが、パリジェンヌはエゴイストだ。子供には愛情をたっぷり注ぐけれど、自分自身のこともそう簡単には諦めきれない。自分を犠牲にし、アッシ・パルマンティエ(ジャガイモと挽き肉のグラタン)を子供たちに作ることだけを生き甲斐にている女性なんて、パリにはまずいない。子供が生まれたからって、パリジェンヌは自分の人生を生きることを諦めたりはしないのだ。

 

『パリジェンヌの作り方』母親の流儀より引用

 

この文章を読んだ日本人の中には相当数、抵抗感を感じる人はいるだろうなぁと思う。

 

子供のために人生を犠牲にするのは美徳のようになっているし、

そうしない親は後ろ指をさされることも多いと思う。

 

集団的圧力のようなものが日本にはあるように思うし。

 

別にパリジェンヌは、子供をないがしろにしているわけではない。

 

何一つ諦めないのがパリジェンヌなのだそうだから。

 

だから、子育ても放棄せず、自分なりの生きるルールを、教養を、哲学を教え込むのだそうだ。

 

子供は王様ではなく、

自分の周りを飛んでいる衛生のようなもの。

 

考えてみると、”親にとっての良かれ”というのは、

子供にとって迷惑で辛いものである時も多い(私はその事をかなり経験した)

そして、大抵間違っている結果になったりする(親は親の言うことは間違いないなどと言うけれど)

 

 

親の、

「○○(私の名前)のため」という言葉や行為は、

独善的で親の狭い視野からの事が多く、

何より私のためというより親の世間体や体裁のためだった。

 

そのため年がら年中否定されて、避難されているような気がした。

 

今考えると、それも全て親の愛情からだったのだとわかるが、

子供はそんな事よりも親が夫婦仲良く、

自分の人生を楽しんで笑顔でいてくれる方が嬉しいのだ。

 

親が自分の時間や人生を楽しんでくれていたほうが、

子供も気が楽だったりする

(じゃないといつも親に監視されているよう気がする)

 

子供のことよりも自分の人生を優先して考えことには、

罪悪感もあるかもしれないが

親がそうすることで子供も自分の人生を優先して考えることができるようになるような気がする。

 

この本は、読むとパリジェンヌの考え方に

「えっ?」と違和感を持つ箇所があるかもしれない。

 

でも、その抵抗感を持つところ、違和感を持つところこそが

自分の考え方や価値観を広げてくれるところ。

 

そういった部分でこの本は、枠を外したい女性におすすめ。

 

 

「もしかして、浮気しているのでは」と恋人に思い込ませる方法

自分に花束が届くよう、自分で手配する。そして、恋人に「気遣いをありがとう」と笑顔で伝える

 

意味もなく、涙を流してみる。

 

恋人からの電話は、無視する。その代わり、甘ったるいメールを送っておく。

 

『パリジェンヌのつくりかた』2.悪習のススメより引用

 

他にも、恋の駆け引きが色々載っている。

 

駆け引きじたい遠い話になってしまった私としては、

「ほー。」と関心。

 

若い時は、そっけなくするなど(笑)の駆け引きをしていたが、

「駆け引きって実は思ったよりも効果がないんじゃないの?」と思った瞬間があり、全くやらなくなった(もっとオープンで正直な方がうまくいくという幻想もあったかも。それに面倒くさい。)

 

だから、こういうのを読むと、

パリジェンヌが何歳になっても女なのがよくわかる。

 

 

「1.パリジェンヌの基本」には、

 

「同じものをください」そう彼は言った。

 

という一文が。

 

 彼の前で気取ってみたり、自分を作ってみたりしたけれど、この一言で、完全に冷めてしまった。

(中略)

一度そう思ってしまったからには、もう何をやっても無駄。とりあえず、ふた口だけ食べて、何かしら理由を見つけて、早めにこの場を去ろう。もう二度と彼に会うこともないだろうな。アデュー(さようなら)

 

『パリジェンヌのつくりかた』1.パリジェンヌの基本より引用

 

「同じものをください」に興ざめするのは、ちょっとわかる。

だが、その場を去ることはしない。

 

パリジェンヌはなんとスノッブで手厳しいのだろう。

 

他にも、この本には、

「男を動揺させる方法」「恋人をうまいこと騙す方法」

なども載っている(真に受けてやってみるかどうかはあなた次第)

 

こうしたパリジェンヌにパリジャンは磨かれていくという事なのかもしれない。

 

この本を読むと、

パリジェンヌについて憧れるところも、

抵抗感を感じるところも、両方でてくるかもしれない。

 

そこがこの本の良さ。

 

いつまでも女性でいていいと言われて、

罪悪感を感じる人、抵抗感を感じる女性に読んで欲しい本。

 

 

 

 

【おすすめ本60】ヒエログリフで学ぼう! 吉村作治著 ※古代エジプトの歴史が楽しく学べる!

ヒエログリフで学ぼう!』 早稲田大学教授 吉村作治

荒地出版社 2004年初版発行

 

 

読んでいて(ヒエログリフのイラストがたくさん載っているので読むだけでなく眺めて)、本当に楽しい本だった。

 

この本を読んでいてふと思い出したのだが、

私は大昔に彼の講演を生で聴いたことがある。

 

通う学校で無料で行われ、在校生の女子大生や女子短大生は誰でも講演に参加できた。

吉村先生は、まだテレビに出始めの頃かな?

若々しく活力に溢れ、エジプト史の魅力を伝える熱意が伝わってきた。

写真を多く使ってエジプトに詳しくない私たちにもわかりやすかったと記憶している。

 

今考えると、日本に帰国した時はああして講演などを沢山行って、

資金を集めていたのだろう(エジプトで発掘することはきっといくらお金があっても足りないくらいだったろうから)

 

 

この本は、ヒエログリフの表紙が絵本のように見えるが、

古代エジプトの歴史が時系列に沿って学べるので、内容はかなりしっかり。

 

中学生や高校生だけでなく、大人にもとってもおすすめできる本!

(2004年発行なので、ちょっと古いけど、、、)

 

 

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この本をおすすめしたい人

 

作者紹介

吉村作治(よしむら さくじ)

 

1943年東京生まれ。

早稲田大学在学中の1966年よりエジプトでの調査・研究を開始。

大ピラミッド内の未知の空間や、世界で初めての人工衛星の画像解析による遺跡発見などで世界中の注目を集める。

現在早稲田大学教授(工博)。

著書に『吉村作治古代エジプト講義録(上・下)』(講談社+α文庫)、監修に『ヒエログリフを書こう!』(翔泳社)、『ヒエログリフの謎をとく』『図説ヒエログリフ事典』(創元社)など多数。

えじぷとぴあhttp://www.egypt.co.jp

 

ヒエログリフで学ぼう!』より引用 ※情報は本が発売されたときのものです

 

 

 

この本のおすすめポイント

  • 写真や絵が豊富で、見ていても楽しいし、イメージが湧きやすい
  • 古代エジプトの歴史が時系列に沿って簡潔に語られているので、誰にでもとっつきやすい
  • 古代エジプトのロマンを感じられる
  • ヒエログリフのイラストが面白い
  • 古代エジプト史を学ぶことによって「価値を多様にもつ」ことを学べる

 

 

心に残った点・役に立った点

 

わかりやすい!

 

ながーい歴史を区切ってみると

 

そもそも、古代エジプトはふたつの時代にわけられます。

 

(前半)古王国時代

(後半)新王国時代

 

 「えっ?そんなことないよ。もっといろんなわかりにくい時代があったし、ほら、ほかにも第○○王朝とかそういうわけ方もあったじゃない!」

と言う人もいると思います。ですが、ここではまず、ふたつの時代に区切ります。

 つぎに、その次代に生きた人、あったものが何かを考えてみます。

 

(前半)古王国時代 【ミイラ・ピラミッド・スフィンクス

(後半)新王国時代 【ミイラ・ツタンカーメン

 

 あれ?クレオパトラがいませんね。そう、クレオパトラツタンカーメンの奥さんでもスフィンクスのモデルでもなく、まったく別の時代の人なのです。そして、ピラミッドやスフィンクスがつくられたのは、古代王国時代だけでした。エジプトの長い歴史のあいだ、ずっとつくられたのはミイラだけなのです。

 

注意!ただし、ここでいうスフィンクスは、みなさんの知っているあの大きなスフィンクスのことで、小さなスフィンクス新王国時代にもつくられました。

 

ヒエログリフで学ぼう!』

出発 歴史のたびに出るまえに より引用

 

 

こんな感じでこの本は始まる。

 

本に話しかけられているような感じで読みすすめることができる。

(そういや、第○○王朝とか教科書ではそんな風に習ったなあ)

 

 

古代エジプトの宗教観と文化がわかる

太陽信仰、星辰信仰(北極星信仰)、アメン神、アテン神、旧約聖書出エジプト記」とファラオなどなど。

 

この宗教観や歴史を学ぶと、

日本との共通な部分があるのが感じられる(太陽を崇拝したりとか)

 

 

 

古代エジプト史は魅力が一杯

 

もともとエジプトはとても豊かな土地。

(砂漠のイメージが強いとびっくりするかも)

 

ナイル川が毎年反乱するお陰で、両岸には田園地帯が広がる世界有数の穀倉地帯だったそう(ナイル川の反乱は、水と良質な土を運び込むことになり、砂に混じった塩分を洗い流してくれ豊穣な工作地帯を作り続けていたのだそう)

 

エジプトにできた最初の共同体は「ノモス」

「国」になる前に42あったそう。

なぜ「都市国家」にならなかったか?

食べ物に困らなかったから。

 

食べるものに不自由せず1000円近く気楽に暮らしていたエジプト人。(対立もない)

 

この豊かでのんびししたエジプトがどうやって国家になっていったか。

 

そのあたりが面白い。

 

 

サーヒル島飢餓碑文にかかれている内容にまつわる、疑問(証拠を捏造?)、

クレオパトラの親ばか、奇策、アントニウスへの誘惑、

ローマ共和国カエサル暗殺、栄枯盛衰の数々など、古代エジプト史にはロマンス、ミステリー、サスペンス要素もたっぷり。

 

 

 アレキサンダー大王が勝ち続けたのは、相手が弱かっただけではありません。そこには明らかな「戦略」の違いがあったのです。

 そもそも古代ではこんな決まりがありました。

 

夜は眠る

 

 これでは当たり前ですね。

つまり、「夜は戦わないで眠る」ということです。前にもおはなししたように、古代では夜は戦いませんでした。たがいが敵味方を確認してから昼間に正々堂々と戦っていたのです。

 ところが、アレキサンダー大王の考えは違いました。

 

夜も戦う

 

「どんな手を使ってもやっつける」それがアレキサンダー大王のやり方でした。アレキサンダー大王の軍は闇討ちをして夜中に休んでいる敵軍に襲いかかり、こてんぱんにやっつけてしまいます。

 そんなちがうルールで戦われたら、相手はたまったものではありません。アレキサンダーの軍はたちまち連戦連勝したのです。

 

ヒエログリフで学ぼう!』

アレキサンダー大王 戦争は、勝てばいい より引用

 

 

こんな、その当時の価値観の違いもとても興味深い。

 

 

価値観を多様にもつ

 現代の日本は「答えはひとつ」の世界でおおわれています。世の中には「良い」か「悪い」しかなく、その中間がありません。

(中略)

 でも、エジプトの歴史からもわかるように、ものごとには「良い」と「悪い」の中間がたくさんあります。つまり、ひとつの出来事にはいろいろな目的やいろいろな理由があってしかるべきで、価値観はひとつではないのです。

 古代エジプト史を学んでいていちばん感じるのは、「わたしたち日本人は本来、多神教的価値観をもっていた」ということです。そんなすばらしい世界観をもっていたのに、わたしたちはいつのまにかそれを失ってしまい、「ひとつの価値観」で判断するようになってしまっています。

 

 「価値観を多様にもつ」ーそれがいまの時代にいちばん必要なことです。

みなさんがこの本で古代エジプトの歴史を学んで、そのことに気づいていただけたら、こんなにうれしいことはありません。

 

2003年12月

吉村作治

 

ヒエログリフで学ぼう!』あとがき より引用

 

楽しくページをめくって最後にあったこのあとがき。

 

ほんとうにそうだよね!と心にしみた。

「価値を多様にもつ」

なるほどなぁと。

 

「自分たちだけが正しい」というひとつの価値観だけで戦争を起こす、と作者は書いている。

 

オリンピックの今年、もうすぐ終戦記念日のこの時期、

この事をエジプト史から考える機会を与えてくれたこの本に感謝。

 

 

 

【おすすめ本59】観察力を磨く 名画読解 エイミー・E・ハーマン アート分析する力を仕事に活かす!

自分的に久々の大ヒット本!

 

絵が好きで美術館にもたまに行く。

だが、この本にあるような観察という視点から絵を観たことは無かった。

なので、最初はアートをそのような視点で捉える事にちょっとした違和感があった(アートは感覚で観るものじゃないの?という感じで)

 

だが、作者は弁護士だが美術史を専門に学んでいるので、

アートに対する愛情や知識がしっかりしていて、

内容に説得力がある。

 

読んでいる最中も面白く、

ためになり、

今後の人生に役に立てられ、

アートへの興味も持てる。

 

とてもおすすめの本なのでご紹介!

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この本をおすすめしたい人

  • 注意力が散漫で失敗が多い人
  • 警察官、医者などの医療従事者、介護職など人を客観的に観察する必要がある人
  • アートが好きな人
  • 観察力を磨きたい人
  • 先生などの職業の方
  • バイアスにとらわれない洞察力を磨きたい人  

 

 

作者紹介

エイミー・E・ハーマン AMY E.  HERMAN

 

美術史家、弁護士。

FBIやCIA、ニューヨーク市警、ロンドン警視庁アメリカ陸海軍のほか、ジョンソン・エンド・ジョンソンHSBC銀行など大手企業で、美術作品によって観察力・分析力を高めるためのセミナーを行っている。

 

訳者

岡本由香子

静岡県生まれ。

防衛大学校卒業後、航空自衛隊に10年間勤務。

現在、児童書からノンフィクション、映像作品まで幅広く翻訳を手掛ける。

『グッド・フライト、グッド・ナイト』(早川書房刊)、『ぼくのなかの黒い犬』、『フランク・ゲーリー 建築の話をしよう』、『ダーク・ライフ』ほか、ペンネームでも訳書多数。

 

『観察力を磨く 名画読解』より

 

 

 

 

 

 

この本のおすすめポイント

  • アートを通して知覚の技法を身につけられる
  • この本を読んだ後に美術館に行くと違った視点からアートを楽しめる
  • 観察、分析、伝達など力を強化する事によって仕事や実生活に役立てられる
  • 実際例がたくさん載っているので、わかりやすく読んでいて楽しい

 

 

心に残った点・役に立った点

 

誰にとっても役に立つ

著者がロースクールに進学した時に、警察の仕事を体験するカリキュラムに参加。

 

そこで、ドアの向こうから怒声が聞こえてくるアパートメントに出動した警官が、銃を構えて扉をノックする後ろについた著者が感じたこと。

 

「目の前の警官に客観的観察力がなかったらどうしよう?警官の取る行動がその場にいる全員の運命を決めるのに。」

 

幸い、警官はうまく事態を収めた。

しかし人に銃口が向けられる場面にいて、死を生々しく意識した記憶は何年もつきまとったそうだ。

 

著者は弁護士になった後、目撃者や当事者の話がどれだけあてにならないかを思い知らされる。

 

その後転職し、ニューヨーク市のフリック・コレクションで教育部門のディレクターに就任。

 

その時に、イェール大学医学部の皮膚科学教授から、アートの分析を通じて医大生の診断スキルをあげることはできないかと相談を受ける。

医大生をフリック・コレクションに招いて、アートの分析を体験させたところ、体験しなかった学生より56%も診断能力が向上したのだそうだ。

 

その結果に興味を持った著者は、学術論文を読みあさり、研究者に会いに行った。

 

友人の助言をきっかけに(警官や救急隊員に教えたら社会の役にたつのではないかという助言)、ニューヨーク市警に電話をかけ、「警官を美術館に招いて、アート作品を見せたいのですが」と提案したのが、セミナー”知覚の技法”の始まり。

 

電話を受けた警察委員はかなり困惑していたらしいが、

やってみようと言ってくれたらしい(唐突な提案によくぞ電話を切られなかったと著者も書いている)

 

このようにして産声を上げた”知覚の技法”

 

その後14年の間に、ニューヨーク市警、ワシントンDC、シカゴ、フィラデルフィアの警察、バージニア州警察、オハイオ警察署長協会、FBI、国土安全保障省スコットランドヤードアメリカ陸海軍、ナショナルガード、シークレットサービス、連邦保安局、連邦準備銀行、司法省、国務省、国立公園局などからも依頼があったそうだ。

 

読んでみて感じたのは、ここにあげた捜査に関係する機関だけではなく、

救急隊員、医者、看護師、介護職、教職、ガードマンなどの、

違和感を感じる知覚力や観察力が必要な人たちなどの人にも参考になるのはもちろん、一般の営業マンやサービス業、経営者や学生などにも(要するにすべての人)”知覚の技法”があれば、仕事やテスト、対人などの分野でも役に立つのではないかと。

 

 

 

 

観察

 

第一部は「観察」

 

なぜアートなのか?

 

アートはどこにでもあるうえ、人間の内面をあばいて観察者の心を揺さぶるものが多い。

心をざわつかせる作品は、脳にとって最高の刺激なのだそうだ。

未知の事柄を学習している時に脳が最も活性化するとのこと。

何年もやっていること(仕事、人間関係、世界観)を見直すには、既存の枠から出てなれない分野に飛び込むことが一番。

(アートは日常から私達を連れ出してくれる)

それにアートは自由な解釈が許される。

 

第一部の観察で、載っている絵をみても、

自分が思ったよりも全然”観察”できていないことに驚く(少なくとも私はそうだった)

 

主観的な感想がメインで、客観的な観察ができていないことにびっくり。

 

おまけに、自分なりのフィルターをかけてものごとを捉えていることにも気がついてびっくり(というかちょっとがっかり)

 

この”観察”力をみがくだけでも、

仕事のミスは減るだろうし、仕事で契約書などを見直す場合も有効かもしれない。

 

道を歩いている時、台風や大雨、地震などの災害にあった時にも役に立つと思う。

 

私は、東日本大震災の被災者だが、

あの日まで避難場所の学校がどこにあるかを全く知らなかった。

 

(私はそこの出身じゃないという事実を差し引いても)道を歩いている時に周りの景色をもっと観察するようにしていたら、そんな事もなかったかもしれないと思う。

 

 

 

見ろと言われたものを見る

ものを見る前に情報を与えられると、事実をそのまま理解しにくくなるそうだ。

 

著者は美術館に行った時に、タイトルや説明書きを読む前に作品を見るように勧める。

タイトルや説明は思考を型にはめ、偏らせるのだそうだ(確かに)

 

ものごとを正確に理解するには、できるだけ多くの情報を集め、できるだけ多くの視点で見ることが大事だ。得た情報を理解し、優先順位をつけ、意味を解読する。タイトルや説明書きなど、事前に用意された情報を入れるのはそのあとでいい。まとめると、次のようになる。

 

まず自分の目で見る

既存の情報や意見を参考にする

もう一度、自分の目で見る

 

『観察力を磨く 名画読解』第三章 カモノハシと泥棒紳士より引用

 

美術館で絵を観る時に、私は絵をちらっと見てからすぐタイトルをみる。

タイトルと絵が頭の中で一致させるように絵を見るという感覚だったことに初めて気がついた。

 

うーん、なんだかマニュアル人間みたいというか、

そんなふうにして絵を観ていたことにびっくり。

 

次回からタイトルや説明に目を通す前に、

まず最初にじっくり絵を観る事から始めてみよう。

 

 第一部の観察だけでも、たくさんの気付きがあった。

 

本書は、

第一部 観察

第二部 分析

第三部 伝達

第四部 応用

という構成になっている。

 

長くなってしまったので、ここではここまでにするが、

少しでも興味を持たれた方は読んでみることをおすすめする。

 

「終わりに」までで327ページあるが、

事例がたくさん載せてあり読み進めさせる力もある本なので、臆せず手にとっていただけると幸いだなぁと思う。