辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本78】『ORIGNALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』アダム・グラント

『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』

アダム・グラント著 シェリル・サンドバーグ解説 楠木建監訳

2016年 三笠書房

 

 

『「与える人」こそ成功する時代』が24カ国以上で翻訳・ベストセラーになったアダム・グラント氏の本。

 

『「与える人」こそ成功する時代』がとても良かったので、

ワクワクしながら読み始めた。

 

 

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この本をおすすめしたい人

  • 「オリジナルな人」になりたいがどうしていいかわからない人
  • 自分の人生に変化を与えたい人
  • まわりを巻き込む説得力が欲しい人
  • チャンスを最大化するタイミングが知りたい人
  • 「オリジナルな人」の例を知りたい人

 

作者紹介

アダム・グラント(Adam Grant)

ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。

1981年生まれ。

同大学史上最年少の終身教授。

『世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人』、世界でもっとも重要なビジネス思想家50人(「THINKERS50」)のうち一人に選ばれるなど、受賞歴多数。

「グーグル」「ディズニー・ピクサー」「ゴールドマンサックス」「国際連合」などの一流企業や組織で、コンサルティングおよび講演活動も精力的に行う。

デビュー作『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)は31カ国語で翻訳され、全世界で大ベストセラーに。

続く本作も『ニューヨーク・タイムズ』誌でビジネス書の売上第1位、アマゾンUSでも第1位(企業文化)を獲得している。

 

楠木 建(くすのき・けん)

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授。経営学者。

1964年東京生まれ。専門は競争とイノベーション。著書に本格的な経営書として異例の大ヒットとなった『ストーリーとしての競争戦略』のほか、『「好き嫌い」と経営『好き嫌い』と才能』(以上、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。

 

『ORIGNALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』より引用

 

この本のおすすめポイント

  • 「オリジナルな人」は特別ではなく誰でも「オリジナルな人」になれる事が書いてある
  • 起業の成功体験が書いてあり学術的な説明がなされている
  • 生まれながらの天才も努力によって成功した事例が載っているので興味深く読める
  • 「賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ」驚くことに先延ばしの効果が書かれている
  • あくまでも研究者の視点で書かれているので説得力がある

 

 

心に残った点・役に立った点

「今、使っているネットブラウザ」からわかること

経済学者のマイケル・ハウスマンが、顧客サービス係の勤務が長く続く人とそうでない人がいるのはなぜか解明するプロジェクトを指揮。

 

銀行や航空会社、携帯電話会社で、顧客に電話対応をする3万人以上の従業員のデータを入手、雇用履歴を見れば仕事への取り組み方がわかるのではないかと考えた。

 

今まで職を転々としてきた人はすぐやめてしまうのではないかと思ったが、実際はそうではなかった。

(過去5年に5つの職についた従業員と、同じ職を5年間続けている従業員を比較しても、離職率に差はみられなかった)

 

ハウスマンは、従業員が職に応募するときにどのブラウザでログインしたかという情報を入手していたことに気が付き、思いついて解析。

 

ファイアフォックスまたはクロームを使っていた従業員は、インターネットエクスプローラーまたはサファリを使っていた従業員よりも15%長く勤務していた。

 

ハウスマンは偶然だろうと、同じ方法で欠勤率を分析してみると、同様のパターン。

 

研究チームは、売上、顧客満足度、平均通話に関して300万件近いユーザーは売上が高く、通話時間が短かく、顧客満足度も高かった。

 

食についてから90日のうちに、インターネットエクスプローラーまたはサファリのユーザーが120日かかった顧客満足度に到達していた。

 

職に定着し、欠勤が少なく、業績も高かったのはブラウザそのものが原因ではなく、ブラウザの好みからうかがい知れる、習慣が要因との事。

 

重要なのは、ブラウザを「どのように」入手したか。

パソコンの場合、ウィンドウズにはインターネットエクスプローラーがあらかじめインストールされている。

マックならばインストールされている。

顧客サービス係のおよそ3分の2があらかじめ組み込まれたブラウザを使っており、もっとよいものがあるかという疑問をもたなかった。

ファイアフォックス、クロームを入手するには、少しだけ頭を使い別のブラウザをダウンロードしなけらばならない。

みずから行動を起こして、よりよい選択肢がないかを探し求めるという自発的な行為が、どれほど小さいとしても職場での行動を決定づけるヒントになるとの事。

 

 

これを読んでとてもおもしろく感じた。

そしてかなり納得。

 

マニュアル通りに会話を進め、苦情に対しても決まった手順で対応していた。

業務内容を固定したものととらえるため、仕事に不満を感じると欠勤するようになり、離職する。

 

ファイアフォックスまたはクロームにブラウザを変更した従業員は、商品を売ったり顧客の疑問点に対応したりする新しい方法を常に探し、気に入らない状況があればそれを修正していたそうだ。

 

要するに、自発的に環境を改善していくので、離職する理由が無い。

だが、こういう人たちは例外なのだそうだ。

 

これを読み、自分のことを振り返ってみた。

 

職場で新しい方法を常に探し、自発的に環境を改善していっていただろうか?

 

・・・・教えられた事をそのままやっているだけだなぁと。

 

人間関係が良好なら職場環境は良いと思えるが、それ以外の工夫は全くしていないと気がついた。

 

因みに私が使っているブラウザはクロームと、フェンリルsleipnir(すごく好きで長年使っている)。

 

 

「起業家」=「リスクを負う人」?

 

「起業家」を意味する「アントレプレナー(Entrepreneu)」という言葉は、経済思想家のリチャード・カンティロンによる造語だそうだが、原義は「リスクを負う人」との事。

 

この本で取り上げられているワービー・パーカー(メガネのオンライン販売会社)への投資を作者は断ったそうだが、その後大成功。

 

投資を断った理由

  1. 4人共学生(生活の全ての時間を投入していない)
  2. 4人の焦点が噛み合っていないため、ウェブサイトも準備されていない。4人が納得する社名をつけるだけでも6ヶ月もかかっている
  3. 卒業後も全時間を投入して会社に専念する気はなく、卒業後の就職先の内定をもらっている(選択肢を残している)

 

「真剣さがなく、入れ込みようが足りないんじゃないか?全力投入せずに無難なところを狙いすぎて、失敗する運命にあるのでは?」

と疑問をいだき、投資の話は断ったのだそうだ。

 

確かにこの状況をみると、中途半端に思えてほとんどの人が投資を断っただろうと思う。

 

だが、実際はそういう姿勢で望んだからこそ成功したのだそうだ。

 

この本は「オリジナル」ということに焦点をあてているが、

オリジナリティには徹底的にリスクを冒すことが必要だという通説をくつがえし、オリジナルな人たちは私達が思うよりもずっと普通の人たちなのだということをあらわしている点が良い。

 

起業なんて、リスクを冒す勇気がある人こそ成功するという思い込みがあったので、

この本はその点でも面白い。

 

「若き天才」と「経験豊富なエキスパート」

若くないとオリジナリティは湧き出ないと思われている。

 

だが、オリジナリティがピークに達する時期とその持続時間は、個人の思考スタイルにかかっているのだそうだ。

(だから早咲きの人と遅咲きの人がいる)

 

イノベーションには2つのスタイルがある。

「概念的イノベーション」と「実験的イノベーション」だ。

 

概念的イノベーターは、大胆なアイディアを思い描いてそれを実行に移すタイプ(短距離走社)

 

実験的イノベーターは、試行錯誤を繰り返して問題解決を行いながら学び、進化を遂げていく。

あらかじめ計画するのではなく、進めていく中で解決策を見出していく、というのが実験的イノベーター(マラソン走者)

 

シカゴ大学の経済学教授ディビッド・ガレンソンがノーベル賞を受賞した経済学者を調べたところ、概念的イノベーターは偉業を平均43歳で成し遂げている一方、実験的イノベーターは平均61歳だった。

 

有名な詩人たちのもっとも増刷を重ねている詩を分析してみたら、概念的イノベーターは傑作を28歳の時に書いていたのに対し、実験的イノベーターは39歳。

 

ノーベル賞受賞歴をもつ物理学者を一人ひとり調べた別の研究では、30歳未満の若き天才のうちのちょうど半数が、理論的研究を行った概念的イノベーター。

一方、45歳以上の老練のうち、92%は実験的研究をしていたそう。

 

概念的イノベーターは、ある分野にはじめて触れてからさほど時間が経たないうちに重要な貢献を果たすので、問題への一定のアプローチ法が定着してしまうと、オリジナリティが低下していくのだそうだ(アインシュタインの問題もそこにあったそうだ)

 

反対に、実験的なイノベーションは、必要な知識とスキルの蓄積に何年も何年もかかるが、オリジナリティの源泉としてより長続きする。

(過去のアイディアを何度も繰り返し使うのではなく、実験によってつねに新たなアイデアを見つけていく)

 

年齢を重ねてもオリジナリティを維持し、専門知識を蓄積していきたいなら、実験的アプローチをするのが良いということ。

(あらかじめ計画せず、あいまいなアイディアや解決法を試していく)

 

つまりマラソンを完走する忍耐でゆっくりと着実に経験を積むことによってオリジナリティを維持していくことができるということは一般の人にも希望につながりそう。

 

 

  • 他にも「誰と組むか」が勝敗を決める パワフルな結束をつくる人の見分け方
  • 「はみ出す人」こそ時代をつくる

 

など、面白く興味深いテーマが沢山。

おすすめです!