スゴ母列伝 いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける
堀越英美 大和書房 2020年3月発行
スゴ母たちは、母親を監視する世間の目に追い立てられ、
「少しでも育児を間違えたら取り返しのつかないことになる」
という思い込みにハマりがちな現代の母親に希望を与えてくれる、
実にありがたい存在なのである。
『スゴ母列伝』より引用
この本をおすすめしたい人
- 育児に自信が無い人
- 母親との確執があった人・今ある人
- 自分は自分のままでいいと思えない人
- この本に載っている人たちの人生に興味がある人
作者紹介
堀越英美(ほりこし・ひでみ)
1973年生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業。
著書に、『女の子は本当にピンクが好きなのか』『不道徳お母さん講座』(河出書房新社)など。
翻訳書に、『ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア』(共訳、オライリージャパン)、『世界と科学を変えた52人の女性たち』(青土社)、『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高校生二人のほんとうのお話』(Pヴァイン)がある。二女の母。
『スゴ母列伝』より引用
この本のおすすめポイント
- スゴ母がすごすぎて、読むのが面白い
- 母はこうであらねばならぬという思い込みを外すことができる
- うちの母はまだましな方かも、、、と自分の母を許せる(かも)
- キュリー夫人や岡本かの子など教科書に出てくる人も、実はびっくりするような母だった事がわかる
- 人それぞれ、人生色々だなぁーなんて人に対する許容範囲が広がる
- 自分の子育てに自己嫌悪を感じている人は少し楽になる(かも?)
心に残った点・役に立った点
私の母は、この本に出てくるような”スゴ母”ではない。
良い時もどん底の時もあったようだが、一般的に見て普通の母。
だが、勉強出来(難関の某資格取得者)、なんでもできる人だったので、
体裁をものすごく気にし、私にダメ出しばかりするとても厳しい親だった。
ずーっとずっと許せなくて、傷ついたままの心を抱えて表面では普通の親子を演じてきたから、心の中にいつも煮えたぎるような怒りや恨みを抱えて生きてきた。
それが、数年前ある事をきっかけに怒りも恨みもあまり無くなった。
本当にそれだけで、人生ずいぶん変わるものだ。
この本のような”スゴ母”を親に持った人ではなくても、
母との確執を持った人は多い。
この本に出てくる人は、故人ばかりだが(だから本にかけるのかも)
本当にぶっ飛んだという表現がぴったりの人ばかり。
私にはとてもじゃないけど、そんな人生送れない。
子どもにとっても理想的な母ではない”スゴ母”たち。
でもなんかちょっと羨ましく感じる部分もある。
こんな風に思ったように生きられたらなぁーという風に思う。
”スゴ母”に育てられた子供たちはきっと、母に振り回される大変な人生だったと思うが、みな母の人生に肯定的。
私の子供はいないから、子どもの立場からしか言えないが、
子どもに同化して子供を支配しようとする母よりも、
世間の常識から外れていてもしたいように生きている母の方が、
子どもは苦しくないかもしれない、、、なんて思う。
”スゴ母”達はみなエネルギッシュ。
名を残している人ばかりなのだから当たり前かもしれないが。
長文ではないが、本書の中にコラム的に書かれている「まだまだいるスゴ母たち」という部分に小池百合子の母、小池恵美子さんが載っている。
その内容を読んだ時、小池百合子の中にはしっかりと母の影響があるのがなんとなくわかるような気がした。
(エジプト人に本物のすき焼きを提供したいと日本料理店「なにわ」をオープン、事業に失敗した夫とともに、日本に帰ってきた娘を置いてカイロで「なにわ」の営業を20年続けた母だそうだ)
樹木希林も、とても彼女らしい逸話がたくさん載っていた。
娘の也哉子さんは、キャラクター文具を許さない母を恨んだこともあるという。
服も大人のおさがりばかりで、サイズの合う服がなかったようだ。
だが、中学入学祝いのとき、通りすがったヨウジ・ヤマモトでほしがった服をすべて購入して娘を驚かせたという。
この本に載っている”スゴ母”たちは、
SNS上に自分の子育てなどを載せたら炎上しそうな逸話ばかり。
それでもきちんと子供は育ち、母の思いもちゃんと受け止めている。
自分の子育てなどに自己嫌悪したりした時は、
この本を読むとちょっとホッとするかも。
個人的にはミステリーの女王 山村美紗さんの完璧主義ゆえに苦悩する姿を知って印象に残った。
彼女の本に著者近影として載っていた写真はいつもとても華やかだった。
その影で、たくさんの苦悩があったのだなぁと。
娘の山村紅葉には99点を取っても厳しくしかる母、ダメ出しばかりする母は、娘であることもきつい部分が多かったかもしれない。
山村紅葉さんは、
今思うと、私たち母娘は、密着しすぎて遠い存在、言い換えれば、すごく距離があるのに近い存在でした。
(中略)
逆に私も、小さいころから訴えたいことはいっぱいあったのに、母の気持ちがわかりすぎるために、何も言えなかったのかもしれません。
(山村紅葉「解けない謎を残していったひと トリックの女王・山村美紗の素顔」『婦人公論』2001年3月22日号)
『スゴ母列伝』より引用
何だか、この気持ちがほんの少しわかるような気がするのだ。
(私はその当時、母の気持ちがわかりすぎもせず、何も言えないわけでは無く、ものすごい反抗という形であらわしたが)
この本の中に出てくる母たちは、「正しい母」ではないかもしれない。
それでも、自分をそこまで生きられる母たちには、やっぱり驚きながらもある種の尊敬すら覚えるなぁ。
人生を思いっきり満喫した人として。