辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本63】『大家さんと僕 これから』矢部太郎 ※大家さんと僕の続編

『大家さんと僕 これから』

矢部太郎

新潮社 2019年発行

 

 

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↑ ”大家さん”は新宿伊勢丹のヘビーユーザーで、

戦後GHQ新宿伊勢丹を接収した話も載っています

 

 

去年(2020年)の11月に初めて読み(その時すでに知名度バツグンの本だったので今更感はあったが)おすすめしたくなり、ご紹介した『大家さんと僕』。

 

 

nonko-h.hatenablog.com

 

 

この『大家さんと僕 これから』はその続編。

 

 

この本をおすすめしたい人

  • 『大家さんと僕』を読んだことのある人
  • 生と死、生きるということを考えたい人
  • ホッとしたりしんみりしたい気分の人

 

作者紹介

矢部太郎(やべ・たろう)

 

1977年生まれ。

お笑い芸人。

1997年に「カラテカ」を結成。

芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、

映画で俳優としても活躍している。

初めて描いた漫画『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。

 

『大家さんと僕 これから』より引用

 

 

この本のおすすめポイント

  • 読んだあとに余韻が残る
  • 生と死を自分なりに考えられる
  • 戦争時代の事を大家さんの体験から知ることができる
  • 疲れている時に読むとホッとする

 

 

心に残った点・役に立った点

 

永遠に続くものは無いのだけど

 

『大家さんと僕』の宣伝文句の中に、

”この時間が、永遠にのように思えてくる”

というコピーがあった。

 

これは糸井重里氏のコピー。

 

このコピーは前作の『大家さんと僕』のためのものだが、

今作を表すのにとてもぴったりなのだ。

 

うーん、さすが糸井重里氏。

 

生と死はセットだし、

裏と表のようなもの。

 

この本を読むと、ホッとするし温かい気持ちにもなるけど、

ちょっぴり悲しく、しんみりもする。

 

やっぱり人間って、

温かい気持ちを感じるには悲しみも必要だし、

両方あっていいんだなぁーなんてちょっと違うことも感じた。

 

 

シャガールみたい

本書の中のいくつかのシーンでは、

シャガールをイメージさせる絵があった。

 

ふわっとした浮遊感みたいなものを感じた。

 

素朴に見える絵だけれど、

作者の矢部さんはとても表現がうまいのだと思う。

 

だから、余韻が残る。

 

その余韻の中で、色々思いを馳せる時間ができるというのがこの本。

 

 

今という瞬間と出会い

 

矢部さんは、

それまでも幸せだったけれども、

大家さんと出会ったことによってもっと幸せになったと表現している。

 

 

この本はフィクションであり、

実話をもとにして実際の大家さんからイメージして作り上げたキャラクターがこの本に出てくる大家さんなのだそうだ。

 

だからある意味ファンタジーでもあるんだけれど、

本から感じる2人の間に感じるものは、友情。

 

親と子やおばあちゃんと孫とはまったく違う、

適度な距離感がある友情。

(それをこの本の中の大家さんは「血のつながらない親族」と表現している)

 

 

私の祖母も祖父は全員亡くなっているが、

母方の祖父は、たまに戦争の話をした。

(でも自分の戦争体験の話はしなかった。亡くなった弟や他の人の話が多かった)

 

そういう時、

その場がなんとなく居心地が悪い空間になったりした。

 

「またはじまった」みたいな空気感というか。

 

今考えると、

もっと色々聞いておけばよかったなーと思う、ほんとに。

 

 

この本の中でも、

大家さんはよく戦時中や戦後の話をされる。

 

そういう話を聞きたがらないとか、

聞くのが面倒くさいと思う人も多いと思う。

 

矢部さんはちょっと戸惑いながらも、聴いている。

 

身内だとその辺がぞんざいになったりするが、

「血のつながらない親族」というこの2人ならではの距離感で

淡々と受け取り合っている感じが良いのだ。

 

 

コロナ禍の現在、

ともすれば恐怖に取り込まれそうになったり、

よくわからない焦りを感じたりするが、

そんな時、この本を読んでみるのも良いかも知れない。