辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本9】聖の青春 大崎善生 【映画化】村山聖という生き様

金曜日の夜に読み始め。

土曜日、朝起きてすぐ読みたくなり昼に読了。

 

その位、読み始めたら止まらなくなる本だったので是非紹介したい。

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この本をおすすめしたい人 

  • 生きる意味がわからない人
  • 何となく毎日生きているなぁという実感がある人
  • 病に苦しんでいる人(この理由は後述)
  • 将棋が好きな人
  • 『三月のライオン』が好きな人

 

作者紹介

大崎善生(おおさき よしお)

 

1957年札幌市生まれ。

2000年、デビュー・ノンフィクションでもある本作で新潮学芸賞を、翌年には第2作『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。

また、02年には初の小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞する。

ジャンルを超えて紡ぎだされる情感あふれる物語世界が多くの読者の支持を集めている。

(以下略)

 

『聖の青春』より引用

 

 

この本のおすすめポイント

 

  • 読み始めたらぐいぐい引っ張られる感じで続きが読みたくなる
  • 村山聖という人間の生きざまの話なので、将棋に詳しくない人でも全然OK
  • 三月のライオンの登場人物 二海堂晴信のモデルと言われているのでそちらと合わせて読んでも良いかも(この本にも友人として登場する先崎学氏は三月のライオンの監修者) 
  • 決して聖人として書かれているわけでは無く、人間臭い部分なども書かれているのできれいごとだけじゃなく村山聖という人間・生き方をリアルに感じられる
  • 病気で辛い思いをしている方に、村山聖という人が病気をどう受け入れていたかが村山伸一氏(お父様)が書かれているあとがきにあるので心に響くかもしれないと感じた

 

心に残った点

  • 村山聖という人間の、人間としての深さ・面白さ

 

「爪は切らなあかんぞ」という森師匠の言葉に

「髪も爪も伸びてくるのにはきっと意味があるんです。それに生きているものを切るのはかわいそうです。」

と答える村山。

 

子供の頃から闘病生活を送ってきた彼なりの生命に対する思いや優しさ。

 

いつも死と隣り合わせに生きてきた者にしかわからない彼の沢山のエピソードが切なく、時にユーモラスに書かれている。

 

とても彼らしいなぁと思うのが、

奨励会の先輩 加藤昌彦氏が村山のアパートでカップラーメンを食べた時のエピソード。

 

村山は将棋盤の上に無造作にカップを置き、どぼどぼとお湯を注ぎはじめた。

(中略)

「そんなことしたら、将棋の神様に嫌われるで」

と加藤は言った。

「はあ?」と村山。

(中略)

「将棋盤をそんなことに使ったらバチが当たるで」

「いやいや、加藤さん。僕は将棋の盤に親しみをこめて、生活の一部としているんです。だからこうして使うんであって、僕が将棋の神様に嫌われるということはないでしょう」

と村山は真顔でいう。

 

『聖の青春』第三章 彼の見ている海 より引用

 

 

読み進めていくうちに、村山聖という人がどんどん身近に感じてきて、

「村山くんそれは駄目でしょ。(こちらも森師匠のような感覚になってしまう)」

と突っ込みを入れたくなったり、

「そうかー。辛いよねー。ほんと辛いよね。」

とこちらまで辛くなって心がシーンとしてしまったりする。

 

  • 将棋の世界の厳しさ

 

子供の頃、土曜日昼に家に帰るといつもTVはNHKの将棋の番組がついていた。

父が好きだったのだろう。

 

一応将棋も指せるし(夏休みに海に行った時に民宿に将棋盤があり、父に教えてもらった)、子供の頃は「はさみ将棋」や「将棋くずし」などを家族でやったりして楽しい思い出があったのをこの本を読んで思い出した。

 

私の親はとても支配的な親で教育も厳しかったのでだいぶ恨みに思ったが、今考えるとそういう楽しい思い出もあったのだなぁーと、無かったと思ったものを拾い集めたような気分になった。

 

そんな風にふわっとしか将棋に触れてきていない私にとって、プロ棋士になる厳しさ、プロ棋士になってからの厳しさは想像を絶するものがあった。

 

「地方の天才児」が奨励会に入ると「普通の子」になってしまう。

そういうレベルで鎬を削る世界。

 

なにせ、米長永世棋聖の有名な言葉があるくらい。

「兄達は頭が悪いから東大へ行った。自分は頭が良いから将棋指しになった」

 

感想戦を見ると

「この人たちの頭はどうなっているのだろうか?」

と、何回見ても驚くほど。

 

そんな中で「体調が良い日は一度もない」という彼が、

身を削るようにして将棋を指す。

 

鬼気迫るほどの迫力。

 

すごい人だ、本当に。

 

  • 師弟関係が胸に沁みる

 

森師匠は作者の大崎善生氏の家に泊まるたびに、

「村山くんがな、村山くんがな」

といつも話していたとの事。

 

作中に胸をうつ数々のエピソードがあるので、是非楽しみに読んでみてください。

 

  • 村山聖氏の病気に対する考え方を是非読んでみて欲しい

 

平成8年初め、大阪「腎炎・ネフローゼ児」を守る会の機関誌に持病の病気に対する考えを「人と違った体験がいっぱい」と題して気候しています。

一部を掲載させていただきます。

 

「目の前の一局に全力を」は病気も同じ

(以下略)

 

『聖の青春』聖のこと より引用 

 

ネタバレになるし、続きは是非読んでみてください。

 

本書で、ずっとネフローゼを発症してから癌でなくなるまでの

彼の闘病を読んできたが、読み終わる最後に村上聖氏が寄稿した文を読んで 

全て納得した。

 

そして余韻がいつまでも続いた。

 

「病気を彼はどういう風に受け取っていたか」

それが、すべてわかる。

 

なぜこんな病気になってしまったのか、運のせいにしたりしない彼の強い意思が胸にせまる。

 

病気を短所と思わず長所と思うという強さ。

 

病気で辛い思いをされている方はたくさんいらっしゃるし、

私も身内の事を考えても病気の辛さはわかるつもりだったけど、、、。

 

今人生が辛い人、病が辛い人、そういう人達に、是非この本を読んでみて欲しいなと思う。

 

そして、こういう人が29年精一杯生きた事を忘れないでいてくれたらいいなと思う。

 

私は読了後、何度も副作用で丸くなった顔で将棋を指す姿を思い出し、

同世代のプロ棋士達が活躍する現在、彼がいたらどうだったんだろうと何度も思った。

 

しかし、悲しむのはよそう。

「哀れみも同情もありません。常に対等」

と彼は言っているのだから。

 

「彼の人生は幸せだったか不幸せだったか」

なんて他人が考えるような次元をはるかに超えた生き方をしたのだから。

 

おすすめです!

 

 

 

 

この本を原作にした映画やドラマ

  • 2001年のドラマ『聖の青春』

村上聖役:藤原竜也

森信雄役:小林稔

 

だいぶ前のドラマだけど、

映画よりも、師弟関係がたんねんにえがかれている。

藤原竜也の演技がみどころ。(小林稔侍はいつもの小林稔侍 笑)

 

 

 

  • 2016年 映画『聖の青春』

村上聖役:松山ケンイチ

森信雄役:リリー・フランキー

羽生善治東出昌大

 

 

 

 

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