辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本88】『上流階級 富久丸百貨店外商部Ⅲ』 高殿円 ※トッカン作者

『上流階級 富久丸百貨店外商部Ⅲ』

高殿 円

2021年4月 株式会社 小学館発行

 

百貨店 デパートが好きだ。

 

子供の頃、デパートに近いところに住んでいたので、

デパートに楽しい思い出がたくさんあるからかも。

 

歩行者天国とか、子供心には本当に楽しかった。

お子様ランチとかホットケーキとかはデパートの思い出の味。

 

デパートは江戸時代から続くところも多いのに、それが無くなっていくのが寂しい。

これも、時代の流れかもしれないけど。

 

上流階級は1も2も読んできたが、

今回の3はそんな世の中の流れに沿った内容。

 

従来の顧客お金持ちの奥様だけではなく、

ネットの時代になって自分の力で財を成した女性が出てくる。

 

従来の外商の世界を見る1、2も面白かったが、

私は今回の3が一番面白く読めたので、ご紹介。

 

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この本をおすすめしたい人

  • 百貨店 デパートが好きな人
  • 外商の世界を知りたい人
  • 高殿円さんの小説が好きな人
  • 仕事を頑張っているけどふと人生を考えてしまう女性達

 

著者紹介

高殿 円(たかどの まどか)

兵庫県生まれ。

2000年に『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。

『トッカン 特別国税徴収官』『上流階級』はドラマ化。

ほか「シャーリー・ホームズ」シリーズや『政略結婚』『グランドシャトー』『35歳、働き女子よ城を持て!』など著者多数。

 

『上流階級 富久丸百貨店外商部Ⅲ』より引用

 

 

この本のおすすめポイント

  • 主人公 鮫島静緒の頑張りに自分も励まされる
  • リッチで華やかな外商の世界が読んでいて楽しい
  • アラフォー女性に立ちはだかる問題が身につまされる
  • ジェンダーや結婚、仕事、終活などのあり方を読みながら考えさせられる

 

 

心に残った点・役に立った点

私は、親の謙遜の道具じゃない

※この先はネタバレ含みます

 

作中に登場する鞘師という女性。

 

美容整形に興味がある独身の40代女性で、両親と三人ぐらしの投資家。

引きこもりの経験も、いまや投資家教室や講演に生かされている。

スイーツ好きで体型を気にしている。

 

『上流階級 富久丸百貨店外商部Ⅲ』より引用

 

 

”外商”という世界に独身で引きこもり経験あり、

ネットで投資をしているので、外で働いているわけでもない。

 

でも、とんでもなくお金を持っている。

 

と、いう今の時代ならではの登場人物。

 

 「どうしても『大丈夫』のために結婚はしたくなくて、自分で運用をはじめたら思いのほかうまくいって、一気に人生が楽しくなった。親の『大丈夫』のために備える男受けするワンピースを買わなくてもいい。好きなブランド品を買える。結婚相談所の人に言われたの。ブランド品のバッグを持っていくと、男の人に金遣いの荒い女だと思われますよって。金遣いの荒い女でなにが悪いの?結婚しても財布は別にすればなんの問題もないよね。見も知らぬ異性に『大丈夫』の基準をつくられるのも気持ちが悪かった。いままでは、親のお金だったから、親の決めたガイドラインに従うしかなかった。でもこれからは違う。なのに、親は言うの。『痩せろ』って」

 鞘師さんの記事が載っている雑誌はいち早く買って、お友達たちに自慢するくせに、必ず最後は容姿をディスる

 

第八章 外商員、買い占める より引用

 

これはその登場人物、鞘師さんのセリフ部分。

 

とても共感。

 

昔ある外車に乗っていた事があるが、その時に母に

「外車なんて乗っていると、友達いなくなるよ」

と。

 

別にその外車はめちゃくちゃ高いわけではないのに、

(でも別に高い外車に乗っていてもいいわけだが)

それで友達がいなくなるとは。

 

私の両親は、とにかく体裁を気にする親だったので、

本当にすべてがそうで息苦しかった。

 

今となっては、両親が心配してくれたのがわかるが、

昔は怒りしか感じなかった。

 

そしてそれが自分の中で理解したつもりになっているから、

どんどん心のなかに溜まっていく。

 

思考でしか理解していないから、

理解して許したつもりだが怒りになっているのにも気がつかない。

 

>ブランド品のバッグを持っていくと、男の人に金遣いの荒い女だと思われますよって。

 

この小説の中では、

結婚相談所の人が言ったセリフとして書かれているが、

こういうことは女の友達も言ったりする、アドバイスとして。

 

あれは何なんだろうねぇ。

 

 

親には”そのままの自分”を受け入れてもらいたいのが子供。

だけど、一番”そのままの自分”を受け入れられないのも私自身だった。

 

 

あんまりにもしんどいから、ついにメールでキレた。

中略

『なぜ私に対してそんなに無遠慮な言葉を吐くのか。人の容姿をどうこう言うことが、どんなにマナー違反で相手を傷つけるのかなぜ考えないのか』。そしたら、すぐにこんなふうな返事がきた。『あなたがかわいいから言っているのよ。他人だったらこんな事を言わない。あなたのためを思っていっているのよ。家族だから』」

 『家族だから』相手が傷つくことも平気で言うし、だれかの前に無遠慮に自分の子や姪を貶める。それが謙虚で、人間関係を円滑にまわす術だと、長らく日本の社会はあたりまえのように受け止めてきた。

 

第八章 外商員、買い占める より引用

 

これはうちの親も言っていたなぁ。

「あなたのためを思っていっている」

 

あなたのためを思ってと、

胸に突き刺さるナイフのような事を言う、よかれと思って。

 

そして、腹を割って話し合える年齢になってその事を親に言うと、

「今更なにを言っているの?」

というのだ。

 

と、ここまで書いて気がいついた。

 

私も同じようなことをしていることに。

主人に。

よかれと思って。

私しか言わないんだからって。

 

これはきっと私の心の中にまだいろんな事が残っているんだなぁと気がついた。

 

この小説は、

エンターテイメントとして楽しく読める。

 

だけど、女性は身につまされたり共感する部分があるかもしれない。

 

私はデパートが大好きなので、

買い物シーンを読んでいるだけでも楽しめた。

 

おすすめです。