『妻の実家のとうふ点を400億円企業にした元営業マンの話』
山中裕之
2023年10月 第1版第1刷発行
株式会社日経BP発行
とうふのメーカーというと、
最近はドラッグストアなどでとうふが安売りされており、価格競争など大変そうだなぁという印象。
だが、この鳥越社長は妻との結婚を機に入社した相模屋食品株式会社を400億円企業にしたという人物。
表紙を見てもらうとわかるが、仕事が楽しいんだろうなとわかる雰囲気をお持ちである。
やはり元森永の営業マンという事で、営業マンの雰囲気もある。
意識が外に向かっているというか、とてもいい顔!
読み物としてもとてもおもしろく、最後には私自身の営業のアイディアにもつながった本なので、とてもおすすめ!
この本をおすすめしたい人
- 起業している人
- 会社員でも自分でプロジェクトを起こしたい人
- 営業マン
- 今仕事のモチベーションが落ちている人
- 商売をしている人
作者紹介
鳥越淳司
相模屋食料社長。
1973年京都府生まれ。
1996年雪印乳業に就職。その後、1951年に設立された豆腐メーカー、相模屋食料株式会社の2台め社長の三女と結婚。2002年に同社に入社し、2007年に33歳で代表取締役に就任。「ザクとうふ」で世間の注目を集め、地方の豆腐メーカーを次々と救済M&Aでグループ化、業界トップに成長する。「ひとり鍋」シリーズ、「うにのようなビヨンド豆腐」などのヒット商品を自ら手がけている。現在の目標は「おいしいおとうふで日本の伝統豆腐文化を守り抜き、その未来をつくる」こと。
趣味は「機動戦士ガンダム」。
山中裕之
1964年生まれ。学習院大学文学部哲学科(美術史)卒業。87年日経BP入社。経済誌「日経ビジネス」、日本経済新聞証券部、パソコン誌「日経クリック」「日経パソコン」などを経て、現在日経ビジネス部編集部で主に「日経ビジネス電子版」と書籍の編集に携わる。著書に『マツダ 心を燃やす逆転の経営』、『新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか』(峰宗太郎先生と共著)、『ハコヅメ仕事論』(奏三子先生と共著)、『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(河内潤氏と共著)、『ソニー デジカメ戦記 もがいて掴んだ弱者の戦略』など。
『妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話』より引用
この本のおすすめポイント
「現場に数字ばかり言い出すのは会社が傾いてきた印です」
債権を通して会社が駄目になる理由が見えてきた。
傾き始めると現場に「数字」だけが降ってくる。
再建のために工場に行くと閉塞感でいっぱいになっている人たち。
現場に生産効率、ロス率などの話をし、もっと切り詰めて利益率をあげないとだめだと言い続けた結果、おいしいお豆腐をと一生懸命作っているはずだった人たちが「白い塊」をつくるようになってくる。
「数値目標を満たせば味はどうでもいい」という意識になってくる。
鳥越社長は、数字は自分で把握する、工場に行って現場の人と話をしてどうやったらおいしいものができるかを考える。するとおいしいおとうふを作る答えは必ず工場で見つかると。
お客様に愛された「黄金時代」はあったはず、それに戻りましょうと。
すると、救済M&Aに行った会社で、それぞれ宝物のような商品がみつかる。
このあたりを読んで、結果は数字とたたきこまれている私の視点がかわったのが実感。
社員全員モチベーションが高い会社なんで、まああり得ません
「相模屋食料株式会社は、社員の数が多いわけでもないし、東大出のエリートさんがたくさん入社してくれる企業でもない。生産設備も整えてはいますが、大手の食品会社さんの比じゃないし、商品開発の技術力も知れまいます。」
だから完璧を期さずに「5割」で見切る。
「ジオングに脚を付けるな」で、早め早めに攻めて、早め早めで見切る。
戦力は限られているから、素早く、そして集中させないと勝てない。場所、目的を限り、ほかは全部捨てるくらいに集中することで、「ある時、ある場所」に限れば、我々でも最強になれるんですね。」
つまり、総力戦で大手と正面から戦うと負けてしまうと。
だから「ランバ・ラルのようなゲリラ戦だ」と。
この考え方は、私が仕事をする上で参考になった。
仕事が楽しくなくなったあの日やりたいことをやろうと舵を切る
経営者にも、いや、経営者だからこそモチベーションは重要だ。
拡大路線の最中で経営が「むなしくなった」鳥越社長は自分の「主観」で会社を引っ張っていこうと決意する。
(引用)
「ザクとうふ」を発売して話題になったが、相模屋が大きく成長したきっかけは実は06年の「第三工場」の稼働だそうだ。
40億円を超える投資をして、量産効率、品質向上、賞味期限も長くできるホットパック工場を入れ、ロボットも使い機械化・効率化をした。
その結果、売上は伸び、利益は増え、そして「むなしくなった」
そして、自分がやりたいのは今やっている規模と効率の正反対、各地の豆腐メーカー、おとうふ屋さんのすごい技術と、それを支えてきた社員さんといっしょに、宝物をみつけながらつながりを広げていくことなんだ。数字という客観よりも、自分自身の主観を優先する。それが私の事業のあるべき姿というか、思想なんだと気づいたわけです。
(引用)
この章は読んでいて、こちらもワクワク。
自分もこんな風にビジョンを持って働きたい!
と強烈に思った。
商売や事業をしている人は、それぞれ自分なりの方向性を見つけるモチベーションになるかも。
「相模屋食料の製販会議へようこそ」
会議は土曜日の朝8時から始まり、グループ会社の現状報告の後、鳥越社長による相模屋の戦略についてのプレゼンテーション。
その際のプレゼントシートの公開の許可をえて、この章では、社内資料が公開されている(抜粋)
これが、とても面白かった。
かつては豆腐屋に独自性があった。
近代化の波がきて、大量生産時代へ。
規格化、画一化、価格競争が唯一無二に。どこの豆腐屋も一緒。
それを鳥越社長は業界を「個」にシフトさせる4段階として、ビジョンを公開している。
「価格競争で終わりのない消耗戦」という言葉が身にしみる。
私が働いている会社も営業の際にコストの面を強調するからだ。
だが、安さで売ったものを値段でひっくり返されるのを散々見てきた。
それをどうするか、会社はそうだとしても私の部門はそこから脱却したい。
この本でそれを考えられるようになった。
まず、1つの提案をミーティングでするつもりだ。
この本は私の視点と行動を変えてくれるかも知れない。
何より、おとうふという文化をこれからどうしたいか、
それを機動戦士ガンダムの視点から語れる鳥越社長の話は楽しいし、希望にあふれている。(私はガンダムをよく知らないが楽しく読めた)
とてもおすすめ本です!