辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本59】観察力を磨く 名画読解 エイミー・E・ハーマン アート分析する力を仕事に活かす!

自分的に久々の大ヒット本!

 

絵が好きで美術館にもたまに行く。

だが、この本にあるような観察という視点から絵を観たことは無かった。

なので、最初はアートをそのような視点で捉える事にちょっとした違和感があった(アートは感覚で観るものじゃないの?という感じで)

 

だが、作者は弁護士だが美術史を専門に学んでいるので、

アートに対する愛情や知識がしっかりしていて、

内容に説得力がある。

 

読んでいる最中も面白く、

ためになり、

今後の人生に役に立てられ、

アートへの興味も持てる。

 

とてもおすすめの本なのでご紹介!

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この本をおすすめしたい人

  • 注意力が散漫で失敗が多い人
  • 警察官、医者などの医療従事者、介護職など人を客観的に観察する必要がある人
  • アートが好きな人
  • 観察力を磨きたい人
  • 先生などの職業の方
  • バイアスにとらわれない洞察力を磨きたい人  

 

 

作者紹介

エイミー・E・ハーマン AMY E.  HERMAN

 

美術史家、弁護士。

FBIやCIA、ニューヨーク市警、ロンドン警視庁アメリカ陸海軍のほか、ジョンソン・エンド・ジョンソンHSBC銀行など大手企業で、美術作品によって観察力・分析力を高めるためのセミナーを行っている。

 

訳者

岡本由香子

静岡県生まれ。

防衛大学校卒業後、航空自衛隊に10年間勤務。

現在、児童書からノンフィクション、映像作品まで幅広く翻訳を手掛ける。

『グッド・フライト、グッド・ナイト』(早川書房刊)、『ぼくのなかの黒い犬』、『フランク・ゲーリー 建築の話をしよう』、『ダーク・ライフ』ほか、ペンネームでも訳書多数。

 

『観察力を磨く 名画読解』より

 

 

 

 

 

 

この本のおすすめポイント

  • アートを通して知覚の技法を身につけられる
  • この本を読んだ後に美術館に行くと違った視点からアートを楽しめる
  • 観察、分析、伝達など力を強化する事によって仕事や実生活に役立てられる
  • 実際例がたくさん載っているので、わかりやすく読んでいて楽しい

 

 

心に残った点・役に立った点

 

誰にとっても役に立つ

著者がロースクールに進学した時に、警察の仕事を体験するカリキュラムに参加。

 

そこで、ドアの向こうから怒声が聞こえてくるアパートメントに出動した警官が、銃を構えて扉をノックする後ろについた著者が感じたこと。

 

「目の前の警官に客観的観察力がなかったらどうしよう?警官の取る行動がその場にいる全員の運命を決めるのに。」

 

幸い、警官はうまく事態を収めた。

しかし人に銃口が向けられる場面にいて、死を生々しく意識した記憶は何年もつきまとったそうだ。

 

著者は弁護士になった後、目撃者や当事者の話がどれだけあてにならないかを思い知らされる。

 

その後転職し、ニューヨーク市のフリック・コレクションで教育部門のディレクターに就任。

 

その時に、イェール大学医学部の皮膚科学教授から、アートの分析を通じて医大生の診断スキルをあげることはできないかと相談を受ける。

医大生をフリック・コレクションに招いて、アートの分析を体験させたところ、体験しなかった学生より56%も診断能力が向上したのだそうだ。

 

その結果に興味を持った著者は、学術論文を読みあさり、研究者に会いに行った。

 

友人の助言をきっかけに(警官や救急隊員に教えたら社会の役にたつのではないかという助言)、ニューヨーク市警に電話をかけ、「警官を美術館に招いて、アート作品を見せたいのですが」と提案したのが、セミナー”知覚の技法”の始まり。

 

電話を受けた警察委員はかなり困惑していたらしいが、

やってみようと言ってくれたらしい(唐突な提案によくぞ電話を切られなかったと著者も書いている)

 

このようにして産声を上げた”知覚の技法”

 

その後14年の間に、ニューヨーク市警、ワシントンDC、シカゴ、フィラデルフィアの警察、バージニア州警察、オハイオ警察署長協会、FBI、国土安全保障省スコットランドヤードアメリカ陸海軍、ナショナルガード、シークレットサービス、連邦保安局、連邦準備銀行、司法省、国務省、国立公園局などからも依頼があったそうだ。

 

読んでみて感じたのは、ここにあげた捜査に関係する機関だけではなく、

救急隊員、医者、看護師、介護職、教職、ガードマンなどの、

違和感を感じる知覚力や観察力が必要な人たちなどの人にも参考になるのはもちろん、一般の営業マンやサービス業、経営者や学生などにも(要するにすべての人)”知覚の技法”があれば、仕事やテスト、対人などの分野でも役に立つのではないかと。

 

 

 

 

観察

 

第一部は「観察」

 

なぜアートなのか?

 

アートはどこにでもあるうえ、人間の内面をあばいて観察者の心を揺さぶるものが多い。

心をざわつかせる作品は、脳にとって最高の刺激なのだそうだ。

未知の事柄を学習している時に脳が最も活性化するとのこと。

何年もやっていること(仕事、人間関係、世界観)を見直すには、既存の枠から出てなれない分野に飛び込むことが一番。

(アートは日常から私達を連れ出してくれる)

それにアートは自由な解釈が許される。

 

第一部の観察で、載っている絵をみても、

自分が思ったよりも全然”観察”できていないことに驚く(少なくとも私はそうだった)

 

主観的な感想がメインで、客観的な観察ができていないことにびっくり。

 

おまけに、自分なりのフィルターをかけてものごとを捉えていることにも気がついてびっくり(というかちょっとがっかり)

 

この”観察”力をみがくだけでも、

仕事のミスは減るだろうし、仕事で契約書などを見直す場合も有効かもしれない。

 

道を歩いている時、台風や大雨、地震などの災害にあった時にも役に立つと思う。

 

私は、東日本大震災の被災者だが、

あの日まで避難場所の学校がどこにあるかを全く知らなかった。

 

(私はそこの出身じゃないという事実を差し引いても)道を歩いている時に周りの景色をもっと観察するようにしていたら、そんな事もなかったかもしれないと思う。

 

 

 

見ろと言われたものを見る

ものを見る前に情報を与えられると、事実をそのまま理解しにくくなるそうだ。

 

著者は美術館に行った時に、タイトルや説明書きを読む前に作品を見るように勧める。

タイトルや説明は思考を型にはめ、偏らせるのだそうだ(確かに)

 

ものごとを正確に理解するには、できるだけ多くの情報を集め、できるだけ多くの視点で見ることが大事だ。得た情報を理解し、優先順位をつけ、意味を解読する。タイトルや説明書きなど、事前に用意された情報を入れるのはそのあとでいい。まとめると、次のようになる。

 

まず自分の目で見る

既存の情報や意見を参考にする

もう一度、自分の目で見る

 

『観察力を磨く 名画読解』第三章 カモノハシと泥棒紳士より引用

 

美術館で絵を観る時に、私は絵をちらっと見てからすぐタイトルをみる。

タイトルと絵が頭の中で一致させるように絵を見るという感覚だったことに初めて気がついた。

 

うーん、なんだかマニュアル人間みたいというか、

そんなふうにして絵を観ていたことにびっくり。

 

次回からタイトルや説明に目を通す前に、

まず最初にじっくり絵を観る事から始めてみよう。

 

 第一部の観察だけでも、たくさんの気付きがあった。

 

本書は、

第一部 観察

第二部 分析

第三部 伝達

第四部 応用

という構成になっている。

 

長くなってしまったので、ここではここまでにするが、

少しでも興味を持たれた方は読んでみることをおすすめする。

 

「終わりに」までで327ページあるが、

事例がたくさん載せてあり読み進めさせる力もある本なので、臆せず手にとっていただけると幸いだなぁと思う。