辛い時にはいつも本があった

辛い時にはいつも本があった

辛い時、苦しい時、悲しい時に書店に行くといつもその時の気持ちにぴったりの本との出会いがありました。

【おすすめ本60】ヒエログリフで学ぼう! 吉村作治著 ※古代エジプトの歴史が楽しく学べる!

ヒエログリフで学ぼう!』 早稲田大学教授 吉村作治

荒地出版社 2004年初版発行

 

 

読んでいて(ヒエログリフのイラストがたくさん載っているので読むだけでなく眺めて)、本当に楽しい本だった。

 

この本を読んでいてふと思い出したのだが、

私は大昔に彼の講演を生で聴いたことがある。

 

通う学校で無料で行われ、在校生の女子大生や女子短大生は誰でも講演に参加できた。

吉村先生は、まだテレビに出始めの頃かな?

若々しく活力に溢れ、エジプト史の魅力を伝える熱意が伝わってきた。

写真を多く使ってエジプトに詳しくない私たちにもわかりやすかったと記憶している。

 

今考えると、日本に帰国した時はああして講演などを沢山行って、

資金を集めていたのだろう(エジプトで発掘することはきっといくらお金があっても足りないくらいだったろうから)

 

 

この本は、ヒエログリフの表紙が絵本のように見えるが、

古代エジプトの歴史が時系列に沿って学べるので、内容はかなりしっかり。

 

中学生や高校生だけでなく、大人にもとってもおすすめできる本!

(2004年発行なので、ちょっと古いけど、、、)

 

 

f:id:nonko-h:20210725140110j:plain

 

 

この本をおすすめしたい人

 

作者紹介

吉村作治(よしむら さくじ)

 

1943年東京生まれ。

早稲田大学在学中の1966年よりエジプトでの調査・研究を開始。

大ピラミッド内の未知の空間や、世界で初めての人工衛星の画像解析による遺跡発見などで世界中の注目を集める。

現在早稲田大学教授(工博)。

著書に『吉村作治古代エジプト講義録(上・下)』(講談社+α文庫)、監修に『ヒエログリフを書こう!』(翔泳社)、『ヒエログリフの謎をとく』『図説ヒエログリフ事典』(創元社)など多数。

えじぷとぴあhttp://www.egypt.co.jp

 

ヒエログリフで学ぼう!』より引用 ※情報は本が発売されたときのものです

 

 

 

この本のおすすめポイント

  • 写真や絵が豊富で、見ていても楽しいし、イメージが湧きやすい
  • 古代エジプトの歴史が時系列に沿って簡潔に語られているので、誰にでもとっつきやすい
  • 古代エジプトのロマンを感じられる
  • ヒエログリフのイラストが面白い
  • 古代エジプト史を学ぶことによって「価値を多様にもつ」ことを学べる

 

 

心に残った点・役に立った点

 

わかりやすい!

 

ながーい歴史を区切ってみると

 

そもそも、古代エジプトはふたつの時代にわけられます。

 

(前半)古王国時代

(後半)新王国時代

 

 「えっ?そんなことないよ。もっといろんなわかりにくい時代があったし、ほら、ほかにも第○○王朝とかそういうわけ方もあったじゃない!」

と言う人もいると思います。ですが、ここではまず、ふたつの時代に区切ります。

 つぎに、その次代に生きた人、あったものが何かを考えてみます。

 

(前半)古王国時代 【ミイラ・ピラミッド・スフィンクス

(後半)新王国時代 【ミイラ・ツタンカーメン

 

 あれ?クレオパトラがいませんね。そう、クレオパトラツタンカーメンの奥さんでもスフィンクスのモデルでもなく、まったく別の時代の人なのです。そして、ピラミッドやスフィンクスがつくられたのは、古代王国時代だけでした。エジプトの長い歴史のあいだ、ずっとつくられたのはミイラだけなのです。

 

注意!ただし、ここでいうスフィンクスは、みなさんの知っているあの大きなスフィンクスのことで、小さなスフィンクス新王国時代にもつくられました。

 

ヒエログリフで学ぼう!』

出発 歴史のたびに出るまえに より引用

 

 

こんな感じでこの本は始まる。

 

本に話しかけられているような感じで読みすすめることができる。

(そういや、第○○王朝とか教科書ではそんな風に習ったなあ)

 

 

古代エジプトの宗教観と文化がわかる

太陽信仰、星辰信仰(北極星信仰)、アメン神、アテン神、旧約聖書出エジプト記」とファラオなどなど。

 

この宗教観や歴史を学ぶと、

日本との共通な部分があるのが感じられる(太陽を崇拝したりとか)

 

 

 

古代エジプト史は魅力が一杯

 

もともとエジプトはとても豊かな土地。

(砂漠のイメージが強いとびっくりするかも)

 

ナイル川が毎年反乱するお陰で、両岸には田園地帯が広がる世界有数の穀倉地帯だったそう(ナイル川の反乱は、水と良質な土を運び込むことになり、砂に混じった塩分を洗い流してくれ豊穣な工作地帯を作り続けていたのだそう)

 

エジプトにできた最初の共同体は「ノモス」

「国」になる前に42あったそう。

なぜ「都市国家」にならなかったか?

食べ物に困らなかったから。

 

食べるものに不自由せず1000円近く気楽に暮らしていたエジプト人。(対立もない)

 

この豊かでのんびししたエジプトがどうやって国家になっていったか。

 

そのあたりが面白い。

 

 

サーヒル島飢餓碑文にかかれている内容にまつわる、疑問(証拠を捏造?)、

クレオパトラの親ばか、奇策、アントニウスへの誘惑、

ローマ共和国カエサル暗殺、栄枯盛衰の数々など、古代エジプト史にはロマンス、ミステリー、サスペンス要素もたっぷり。

 

 

 アレキサンダー大王が勝ち続けたのは、相手が弱かっただけではありません。そこには明らかな「戦略」の違いがあったのです。

 そもそも古代ではこんな決まりがありました。

 

夜は眠る

 

 これでは当たり前ですね。

つまり、「夜は戦わないで眠る」ということです。前にもおはなししたように、古代では夜は戦いませんでした。たがいが敵味方を確認してから昼間に正々堂々と戦っていたのです。

 ところが、アレキサンダー大王の考えは違いました。

 

夜も戦う

 

「どんな手を使ってもやっつける」それがアレキサンダー大王のやり方でした。アレキサンダー大王の軍は闇討ちをして夜中に休んでいる敵軍に襲いかかり、こてんぱんにやっつけてしまいます。

 そんなちがうルールで戦われたら、相手はたまったものではありません。アレキサンダーの軍はたちまち連戦連勝したのです。

 

ヒエログリフで学ぼう!』

アレキサンダー大王 戦争は、勝てばいい より引用

 

 

こんな、その当時の価値観の違いもとても興味深い。

 

 

価値観を多様にもつ

 現代の日本は「答えはひとつ」の世界でおおわれています。世の中には「良い」か「悪い」しかなく、その中間がありません。

(中略)

 でも、エジプトの歴史からもわかるように、ものごとには「良い」と「悪い」の中間がたくさんあります。つまり、ひとつの出来事にはいろいろな目的やいろいろな理由があってしかるべきで、価値観はひとつではないのです。

 古代エジプト史を学んでいていちばん感じるのは、「わたしたち日本人は本来、多神教的価値観をもっていた」ということです。そんなすばらしい世界観をもっていたのに、わたしたちはいつのまにかそれを失ってしまい、「ひとつの価値観」で判断するようになってしまっています。

 

 「価値観を多様にもつ」ーそれがいまの時代にいちばん必要なことです。

みなさんがこの本で古代エジプトの歴史を学んで、そのことに気づいていただけたら、こんなにうれしいことはありません。

 

2003年12月

吉村作治

 

ヒエログリフで学ぼう!』あとがき より引用

 

楽しくページをめくって最後にあったこのあとがき。

 

ほんとうにそうだよね!と心にしみた。

「価値を多様にもつ」

なるほどなぁと。

 

「自分たちだけが正しい」というひとつの価値観だけで戦争を起こす、と作者は書いている。

 

オリンピックの今年、もうすぐ終戦記念日のこの時期、

この事をエジプト史から考える機会を与えてくれたこの本に感謝。